「かーたおーかくーん!君だけまだシール0枚だよ!」
教室の壁に貼られた九九の表を見ながら担任の先生は大声で言いました。何人かはすでに9枚のシールを貼り終え、他の皆も大体5,6枚は貼っていました。私のみ0枚。小学2年生秋の教室は妙に寒々しく感じた記憶があります。
「皆が何をやっているのか分からない。」
私が先生に呼び出されたときに言った言葉です。当時の私の頭の中では常に「7+8」と「8+7」が渦巻いていました。父親に風呂場で出されると毎回「14」や「16」と答えてしまい、どうしても「15」にならない。皆が九九に専念している時に私が格闘していたのはこれでした。
そう。九九どころではなかったのです!
このことを先生に伝えると、私は階段に連れ出されました。
「あの広い所が10ね。7はどこ?」
これはすぐに分かりました。私は広い所から3段降りた所に立ちました。
「正解じゃないの!8段上がってみて。」
「いーち、にー、さーん・・・」
私は数えながら階段を上っていき、8段上り終えると下に目を向け広い所からの段差を確認しました。
「いくつ?」
「15」
「そう。じゃ7+8は?」
「・・・15」
「すごいじゃない!」
「じゃ8+な…」
「じゅーご!」
この一件以来、たし算やひき算を見ては階段を想い起し、自分を上下させるようになりました。また、階段を見ては数を割り振るようにもなりました。そして、それらを繰り返す内に、計算式を見るのが楽しみになりました。今でも数字を見ては階段が現れ、キリの良い数字の段は少し広々としています。
皆さんも、数字がついた階段を昇ったり降りたりしてみてはいかがでしょうか?
